読後レビュー。【AI VS. 教科書が読めない子供達】。AIに対しての正しい理解とそれでも著者が憂う日本の子供達。親、教育関係者の全てが読むべき1冊。

2019年ビジネス書大賞受賞。
28万部突破。
2018年2月15日に初版があって、2019年9月に14刷と、とても良く売れている
ビジネス書です。
大抵の本屋さんに行くと、いまだ平積みされている事が多い本ですね。
「どうして、2018年の本を2019年10月に?」
という質問が聞こえてきそうですが、そうです。
ブログを書き始めたからですね(笑)。
実は、ずいぶんと前から書店に並んでいる事は知っていました。
でも、教育書っぽい印象で、手に取らずにいましたが、ブログを書く今。
「食わず嫌い」はいけませんね。
・・・前置きが長くなりました。
読後の印象は・・・
「やっぱり、文章は丁寧に読まなきゃね。」
「『世の中の困った事を解決する』って、ブログだわ。」
でした。意味が不明ですね。
いつものように、本は、是非手に取って読んで欲しいので、ネタバレしない程度に
解説をしたいと思います。
作者 新井紀子(あらい のりこ)って?
東京都生まれ。一橋大学法学部および、イリノイ大学数学科卒業。イリノイ大学大学院数学研究科を経て、東京工業大学より博士(理学)。2006年から国立情報学研究所教授。2008年から同社会共有知研究センター長。2017年から社団法人「教育のための科学研究所」代表理事。
専門は数理論理学。数学以外の主な仕事として、教育機関向けのコンテンツマネージメントシステムNetCommonsや、研究者情報システムresearchmapの研究開発がある。
2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。
科学技術分野の文部科学大臣表彰、Netexplo Award、日本エッセイストクラブ賞(「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」)などを受賞。
2017年にはTED Conference、2018年には国連にて講演を行った。
ビジネス書大賞、有難うございました。授賞式では、ジャーナリストの浜田敬子さんのモデレーションで、お話をさせていただきました。 pic.twitter.com/lP3uDMdLwQ
— 新井紀子/ Noriko Arai (@noricoco) July 6, 2019
お綺麗な方です。数学博士で情報学の権威です。つまり、プログラミングやインターネット、
PC等の権威という事ですね。
この本は、著者が管轄したプロジェクト「ロボットが東大に入れるか」で開発されたロボット
「東ロボくん」の紹介から始まり、
- 東ロボくんは、MARCHレベル
- AIのできる事とできない事
- AIがどうしてもクリアできない「読解力」と「常識」
- 人間に「AIにできない仕事」ができないのか?
- リーディングスキルテスト(RST)の開発
- RSTを使った全国読解力テストの結果
- 著者の考える最悪のシナリオ
と話が展開していきます。
第1章 MARCHに合格 -AIはライバルー
情報学の権威の著者は言い切ります。
AIを搭載したロボットが人間の仕事を全て肩代わりする事はありません。
AIが神に変わってユートピアをもたらすことはありません。
AIが人類を滅ぼすといったSF。
そんな、映画やドラマ、マンガが作り出す、科学技術が趨勢した近未来。
AIやロボットが人間を上回り、支配する世界。
そんなSF映画ありますよね。
そんな世界は、今のところやってこないんだそうです。
それどころか、AIなんてものは、今だ存在していないと言い切ります。
AI = artificial intelligence = 人工知能 = 人間の一般的な知能と同等のコンピュータ
アメリカでクイズ王を倒したAI「ワトソン」や画像認識の最先端を紹介しながら、
そんなSFみたいなお話しにはらなないと言い切ります。
ただ、当の「東ロボくん」。東大合格はできませんが、”MARCH”なら合格できるレベルなのだとか。
MARCHとは関東私立5大学。早稲田、慶応、上智の下位に位置する大学です。
明治、青山学院、立教、中央、法政の5大学。
「東ロボくん」は、センター試験平均点437.8点を上回る、525点。偏差値57.1まで上昇した
というのです。
そうすると、SFの様な世界は今のところやってはこないが、入試という概念だけでいうと、
半分以上の試験生を追い抜いているという事が事実があるという訳です。
そこに、著者は危惧をしています。
第2章 桜散るーシンギュラリティはSF
シンギュラリティとは、
AIが人間の能力を超える地点
を指します。
著者は、スパコンを駆使しても、「東ロボくん」が東大を合格できない理由を理路整然と
論理的に説明がなされています。
是非本を読んで欲しいのですが、1つ面白い例がありましたので、ご紹介します。
AIは意味を理解しないそうです。
自動翻訳機の話題で、アップルの「Siri」、グーグルの「OKグーグル」、NTTドコモの
「しゃべってコンシェル」を例に出しています。
入力 私は先週、山口と広島に行った。
翻訳 I went to Yamaguchi and Hiroshima last week.
正しいですね。では、この「山口」が「山口さん」であればどうでしょう?
入力 私は先週、山際と広島に行った。
翻訳 I went to Yamagiwa and Hiroshima last week.
と、なってしまい、ここが、AIの限界点であると著者はいう訳です。
日本人であれば、「山際」は人で、「広島」は県である事を何となく理解します。
AIはこの「なんとなく」を理解できないのだというのです。
AIとは電子レンジと同じく、ただの技術という訳です。
電子レンジが、人が感じる美味しいという事を数値化し、温度や熱の通り方、外気を計算し
最適な料理を提供してくれるかもしれませんが、「美味しい」という事を理解している訳
ではないというのです。
そういった意味で、シンギュラリティなんてものがやってくると、業界の人間は重々承知
なのだという訳です。
第3章 教科書が読めない -全国読解力調査
じゃあ、AIが意味を理解しなく、シンギュラリティが来ない事は分かったけれど、
それで安心、となるのか、というとそうではありません。
「AIができない仕事」が人間はできるのか?と著者は問いかけます。
そこで、著者は、今度は人に対して「リーディングスキルテスト(RST)」なるものを
考案、実験します。
簡単に言うと読解力テストです。中学1年生~高校2年生に対して行う訳ですが、
中学生高校生は簡単な文章が読めないんだ、という結論を得ます。
簡単な例を紹介します。
次の文を読みなさい。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名はAlexandraの愛称であるが、男性の名
Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢の内から1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
①Alex ②Alexander ③男性 ④女性
正解は、このブログの最下段に記しておきますね。
特に読めないだとか、難解な問題でない事は明らかです。
この問題をしっかり間違う中学生高校生がいる訳です。
中学生までの教科書は、文章が読めれば意味を理解できるように作られているそうです。
著者は、教科書が理解できる読解力がそもそもない中学生が多数存在しているのだと
結論付ける訳です。
そしてそれば、AIも同じであり、つまりMARCH以下の偏差値の子供達はAIに仕事を
奪われてしまうと危惧しています。
第4章 最悪のシナリオ
そして、最悪のシナリオと閉める訳ですが、そんな中でも「一筋の光明」があると
著者を説きます。
ブルーオーシャンを考える事、人が困っている事を理解し、それを仕事に結びつける事。
それは、AIには絶対にできない事だと最後に締めくくります。
まとめ
途中、数学の統計、確率のお話しや、RSTの例題など、しっかり読まなければ
理解しにくいポイントがあります。
ただ、この本自体、「読解力」について問われていますので、飛ばし読みをしてしまう事に
躊躇してしまいます。
途中、論理的な言い回しをする部分があり、読むのに苦心する所もありますが、
最後まで読むと、スッキリするところもあります。
是非読んで欲しいと思う人たちは
- 先生など教育関係者
- 子供を持つ母親、父親
- 塾やスポーツ等を含めた習い事の先生、講師、コーチ
- 新入社員を担当する部署の上長
- ブロガー
- 起業家
です。上位4つは、必須の様にも思いました。
「困った事を解決するサービス」という事で、ブロガーの名前も入れています。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
問題の正解 ①Alex
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